こんな病気だったらなってもいいなあ。
今日は、美浜町の海岸に流木を拾いに行った。
海に来るときは、大概、歌をうたう。自分の歌を。誰か見ていても気にしないのが僕のルール。それに、歌ってたとしても誰も声をかけてこない。そんなことは一度もないもの。ルールということでもないけど、ただ気にしないだけ。
流木探しながら歩いてたら、よくある石垣みたいなやつがあったから、カッコつけて写真をとった。
そのまま流木を何本か抱きかかえて歩いていたら、疲れた。だから、まとめて置いておいた。明日もう一回取りに行かなきゃ。
重い荷物を置いて、進んで行ったら、穴だらけ。
どうなってんのか。
すると、遠くにトラック。それから人影がある。
これが、おじさんとの出会いだ。
といっても、名前は教えてもらってない。でも、素敵な人で、30分以上僕の相手をしてくれた。
いやいや、そんなことより、穴を開けた張本人がおじさんだ。
「何をしてるんですか?」
「釣りのえさとっとんだよ」
そういって、ちょっと形の変わった、踏み足しやすそうなスコップを一気にザクッと!水が溢れた柔らかい土にさして、テコの原理でくいっと土を持ち上げて、スコップを返して、土の塊をほぐす。
すると、ミミズのようなもんが出て来た。
「じゃむし」
といって、にまあっと笑い、腰につけた、白いポリ容器に入れた。
「今の若いもんはよお、擬似のえさみたいなのつけてやるんだわ。でもよ、年寄りはあんな釣り方できんもんで、こうやって餌を自分でやるんだわ。」
「まあ、毎日、暇だもんでよお。でも、えさ代だけでもバカにならんだろ?年金暮らしだからよ。」
なるほどなあ。僕は暇が好きだけど、究極的に暇になると、釣りの餌を取り始めるのかと感心してしまった。
でも、ここいらの人たちは、昔は釣りしたり泳いだりして遊んでいたようだ。そりゃそうだ。
そういえば、以前にあったおじさんなんかは、木の実をパクパク食べてたっていってたなあ。
そんな記憶を辿ったりしてたら、突然おじさんが、
「わし、病気だもんでよ」
え?今なんて言った?2秒くらいポカンとしてしまった。
そしたら、おじさんが「やみつきってこと」って言いながら、またにまあって笑った。
一瞬の憂いを返して欲しいくらいに、僕は幸せな気持ちになった。
「だってよ、これ一匹で、タイ一匹釣れるんだ!他にも魚いっぱい釣れる」
「こりゃ、一回やった人は、みんなやみつきになるねえ」
こんな素敵な病気にかかってみたいもんだって心から思ったよ。
言葉ってのは面白いね。