ミニレゾのミカタ

『ニートのいずみくん』の日記的なログ

はだかになるってこと

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裸一貫〈 はだかいっかん 〉

僕ははだかになった

涙していたのだと思う

 

そこには木々があって

苔が生えていて

水が流れていた

 

景色の全てがアースカラー

「自然」というものを素肌に感じることのできる場所

 

とてもじとっとしていて暑いアリエッティでの生活の中

〈より快適な生活をするための手段〉として

はだかになることはあった

そのままに時間を過ごすことはあった

家の中でね

 

でもその場所は違った

 

もっと自然と一体になれるようなそんな場所だ

生活のための手段ではなく

〈ただただ純に生きているのだ〉ということを知る

 

人ひとりの命は

この体ひとつで生きている

息している

 

服や地位や名誉なんてものはない

B612で愛おしいバラと暮らす王子さまの言葉を借りれば

 

「そんなものは人じゃない!」

「キノコだ!」

 

つい先ほど

もっと自然と一体になれるようなと書いたけれど

自分自身もまた自然なのだということに気づく

 

でも僕のはだかは

ただのはだかであって

自然の中に「あった」という感じ

 

眼前に広がる緑と青と茶の前には

僕の肌色はとても浮いて見える

僕はその場においても自然の中においても「異物」だった

 

僕のはだかは裸一貫

はだかである自分以外なにもなかった

それもまた素晴らしいことであるのは分かっている

本当はとても生を感じる言葉であることは分かっている

 

でもそれでも

はだかの体以外になかった自分に

涙せずにはいられなかったのだ

 

はだかになるってこと

僕が見ていた景色の中には

大切なふたりが愛し愛されるように 

笑顔のままに心のままに

自然と遊び自然と戯れていた

 

ふたりはひとつだった

 

あまりにも美しく無垢な姿で

あまりにも美しく無垢な姿で

 

きらきらと さらさらと

なんだかオーラのようなものが

ふたりから放たれているように見えた

 

とても神秘的な姿だった

 

ふたりの心はつながっていて

互いに心を通わせていて

 

それはなんでかって

触れて 離れて

離れて 触れて

何度もそうやって互いを交わしていて

そうして知っていってる

その一瞬のお互いを

 

はだかになるってことは

ただ〈服を脱ぐこと〉ではなかった

ただ〈地位や名誉やなんやかんや〉を捨てることではなかった

ただ〈素肌を晒すこと〉ではなかった

 

この瞬間のぼくは

そのことに気づいてしまった

 

そこに居られない自分を責めていた

あまりに美しいふたりを前に

畏敬の念をも抱いていた

 

混沌とした心理状態になって

両手をこぶしにしてほっぺをむぎゅっとするしか

もはや自分を保つ方法はなかったのかもしれない

 

それでも僕の肌にいまだにのこるあの感覚

 

水の中はとても冷たくて

唇が紫になるほど冷たくて

歯も顎もがくがくするほどに冷たくて

 

それゆえに

その中で触れた人肌の温もりが

今もこの肌に残ってる

 

あたたかかった

安心した

生きているってことを

体の奥深くで感じた

 

はだかになるってことは

きっとそういうところにある

 

いま僕はきみに触れたい

はやく会いたい その目を見つめたい

そう思うほど涙が溢れる

 

それがどういうことかってことが分かるような気がする

いま僕が感じているこの感覚こそ

 

〈はだかになるってこと〉

 

なんだろうなあ

 

 

 

 

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